エネルギー分散型分光法とカソードルミネッセンス分光法による隕石中のメジャー、マイナー、トレース元素分布の解明
はじめに
地質試料には、産出された地域に関する多くの歴史的情報が含まれています。この歴史的情報は、隕石のように人類や地球の歴史よりも古いものがしばしばあります。今から約45億年前、原始太陽系星雲の降着円盤で岩石質の惑星や隕石、小惑星が形成されました。隕石の中には、コランダムやカルシウム‐アルミニウム包有物(CAI)を含む鉱物が含まれています。これらの隕石を分析することで、原始太陽系に関する貴重な情報を得ることができるため、徹底的に調査する必要があります。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いたエネルギー分散型分光法(EDS)は、高い空間分解能で試料の元素組成を決定する分析科学の重要な手法です。EDSは、試料から発生した特性X線のエネルギーに基づいて鉱物の分布を決定することができるため、地質分析に最適な手法です。しかし、検出限界は0.1 wt.%程度であり、微量元素に対する感度が低く、鉱物の形成や変質の多くの特徴を明らかにすることができないという問題があります。微量元素の化学的性質を明らかにするには、カソードルミネッセンス(CL)がよく用いられます。CL分光法では、試料から放出される光を紫外、可視、赤外の各波長で分析します。多くの微量元素(および結晶欠陥)は、これらの波長で発光するため、分光分析によって100万分の1(0.00001 wt.%)のレベルでその存在と分布を明らかにすることができます。
EDSとCLの信号は明らかに相補的な性質を持っているにもかかわらず、電子顕微鏡ではハードウェアの互換性がないために、これらの信号を同時に検出することができないことがしばしばあります。ここでは、EDSとCLの分光データを同時に取得する方法を紹介します。南極で発見されたコンドライト隕石(Miller region 090010)についてEDS/CL同時分析を実施しました。試料にCAIが含まれ、コランダムの粒界と微量元素のFe、Smの分布を明らかにすることができました。
分析法
今回分析した試料は、南極で発見されたコンドライト質の隕石で、CAIが含まれていました。試料は薄切片にし、帯電を防ぐためにPECS™ IIシステムを用いて厚さ3.0 nmのカーボンコーティングを施しました。
CLスペクトルはMonarc® Proシステムを用いて収集し、EDSスペクトルはFE-SEMに取り付けたEDAX® Octane Elite検出器(EDAX)を用いて収集しました(図2)。
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Figure 2. Schematic layout of the experiment. The Monarc CL detector and Octane Elite EDS detector are attached to an SEM. CL and EDS spectra are captured within DigitalMicrograph software with beam control by the DigiScan scan control system.
CLとEDSの測定条件は、SEMポールピースから下に約10mmが分析位置ですが、分光式CL検出器に採用されている集光ミラーによって光路が遮られるため、発生したX線がEDS検出器に到達できません。しかし、Monarcシステムの「EDS集光ミラー」オプションを使用することで、CLとEDSの信号を同時に効率的に取り込むことができました。EDSとCLの信号DigitalMicrograph® ソフトウェアを使って同時に収集され、EDSマップとCLマップの間に完全なピクセル相関を持たせることができました。
試料は加速電圧10 kVで、130 μm × 130 μmの正方形領域を375×375ピクセルでスキャンしました。EDSデータは0~10 keVの範囲を2048チャンネル、エネルギー幅は5 eV/chで取得しました。CLデータは、367~783 nmの範囲を670チャンネル、波長幅は0.62 nm/chで取得しました。
結果と考察
EDSによる元素の定量分析とCL分光法を組み合わせて、同じ空間座標で観察した鉱物を特定しました。EDSのスペクトルからは、Mg、Ca、Alに加えて、OやSiなどの含有量の高い元素や、Fe、C、Ti、Naなどの含有量の低い元素が検出されました。

Figure 3. (left) Elemental quantity maps extracted from the EDS spectrum image corresponding to aluminum (blue), calcium (green), and magnesium (red); and (right) extracted EDS spectra from points 1 (aqua fill), 2 (red), and 3 (green).

Figure 4. (left) True color representation of the CL spectrum image (color) overlaid with SE image (gray), and (right) extracted CL spectra from points 1 (aqua fill), 2 (red), and 3 (green). Points 1, 2, and 3 are the same locations as in Figure 3.
一方,CLスペクトルデータからは,スピネル(MgAl2O4) with Cr3+の存在が明らかになり、680、691、704、713、723 nmにCr3+の特性ピークが見られました。(図4のスペクトル3を参照)。EDSではCr3+の濃度が低すぎて検出できませんでしたが、CL発光スペクトルではスピネル中のCr3+の特徴が顕著に表れています。
さらに、コランダムでは580 nmで物質内粒界が観察されました(図5の矢印位置を参照)。


結晶粒の大きさから、冷却速度や温度など、結晶形成時の条件を知ることができます。
微量元素のCL 発光ピークは、コランダムでは460 nmにFe3+[2]、アパタイトでは 603 nmにSm3+[3]が観測されました。460 nmと603 nmのピーク強度の周囲のスペクトル強度との差から、微量元素マップを作成しました(図6)。
微量元素の検出は、EDSの検出限界以下の元素を検出できるCL分光法の大きな利点です。
まとめ
CLとEDSを同時分析することで、完全なピクセル相関が可能となりました。EDSで元素の定量分析を行い、CLで粒界と微量元素マップを収集しました。このように同時分析することで、どちらかの技術を単独で使用するよりも明確な利点が得られます。EDSとCLのデータは互いに補完し合うことで、元素の定量分析や微量元素の情報を含む、より完全なサンプル分析を行うことができます。
参考文献
- D. J. Stowe, J. D. Lee, and M. Bertilson, "Octane Elite and Monarc Come Together to Capture EDS and CL Simultaneously," EDAX Insight, pp. 1-2, September 2020.
- J Mogmued, et al., Journal of Physics: Conference Series 901 012075 (2017).
- C.M. MacRae, et al., Microscopy and Microanalysis 18, 1239-1245 (2012).
- NASA Curation | Antarctic Meteorites. "Thin Section Photo of Sample MIL 090010 in Plane-Polarized Light with 1.25X Magnification." 25 Apr 2021. https://curator.jsc.nasa.gov/antmet/samples/antmet_img.cfm?image=MIL090010c2_1pt25x_ppl.jpg&sample=MIL090010