Gatan | AMETEKSkip to Main Content
No options found

Spherical indexingマスターパターン: OIM Matrix解析時間の改善

はじめに

電子後方散乱回折法(EBSD)は、材料科学や地質学において、幅広い材料や天然鉱物試料の微細組織や結晶方位を調べるための強力なツールです。従来、EBSDパターンはHough変換によりバンドを検出し、検出されたバンドの角度関係から指数付けを行い、方位の決定・相分離を行います。しかし、従来のHough Index法では、回折面が共通な場合に相分離ができなかったり、EBSDパターンが弱い場合に指数付けができなくなるという問題があります。

 

指数付け法

近年、Spherical Index法という画期的なEBSDパターンを指数付け手法を開発しました。Spherical indexingでは、得られたEBSDパターンを投影効果の補正を行い、角度空間上のマスターパターンと相関させ、結晶方位を決定します。このマスターパターンは球体表面に投影されており、すべての方位を含んでいます。通常、マスターパターンは動的回折シミュレーションを考慮して生成されます。このシミュレーションは、結晶構造の複雑さと単位格子内の原子位置の数に応じて、計算量が多くなり、時間が必要となります。そのため、EDAX® OIM Matrix™ には、代表的な約300の計算済みマスターパターンを含んでいます。

 

動的回折シミュレーションよりも短時間でマスターパターンを生成するための代替手法があります。その一つは、運動学的回折モデルを用いる方法です。このモデルは多重散乱および吸収効果を無視するため、短時間でマスターパターンを生成することができます。この手法では、マスターパターンにバンドの位置は変わりませんが、実際のEBSDパターンで観察されるバンド内の微細構造を再現することはできません。

 

2つ目の方法は、実際に収集されたEBSDパターンを用いて実験マスターパターンを作成することです。このアプローチでは、まずパターンを保存しながらEBSDの測定を行います。次にHough Indexや運動学的回折モデルのマスターパターンを用いて指数付けを行います。測定したデータから鮮明なパターンが選択され、指数付けされた方位に基づいて、角度空間上に投影されます。次に対称性を考慮して、投影される領域が増えます。すべての球面が埋まるまで、他のパターンでも投影を行います。この実験マスターパターンには、実際のEBSDパターンの微細構造を含んでいるという利点があります。このアプローチは、空間群の情報と格子定数が分かれば、ユニットセル内の原子位置が不明な場合でもマスターパターンを生成することが可能になります。

 

試料と結果

実験マスターパターンの適用例として、カンラン石と斜方輝石を含む鉱物試料の相解析が挙げられます。カンラン石と斜方輝石はどちらも、マグネシウムと鉄の含有量が変化する固溶体系列を持つ鉱物群です。通常、鉱物群から特定の鉱物を選択し、その鉱物の情報を用いてマスターパターンを生成します。フォルステライトとエンスタタイトの例を図1に示します。

 

Alternative master patterns for forsterite and enstatite. The dynamical diffraction master patterns took ~16 h, the kinematical approach took ~30 s, and the experimental master patterns were achieved in ~15 s.

図 1. フォルステライトとエンスタタイトのマスターパターン。動的回折マスターパターンの作成には約16時間、運動学的アプローチには約30秒、実験的マスターパターンの作成には約15秒必要でした。

 

フォルステライトはMg2SiO4、エンスタタイトはMgSiO3とSiとOの比率が異なる結晶です。この場合、動的回折マスターパターンの生成に約 16 時間かかりました。対照的に、運動学的マスターパターンはわずか30秒、実験マスターパターンはわずか15秒で生成することができました。これらの時間は、マスターパターンの作成時間が大幅に短縮されたことを示しており、初めて挑戦する結晶相のSpherical indexingによる指数付けを行うまでの時間を大幅に短縮することができます。

 

Experimental EBSD pattern from each phase with matching orientations from the three corresponding master patterns shown in Figure 1. This figure shows that the experimental pattern most closely resembles the example pattern, which is to be expected. diffraction band intensities and visible details.

図 2. 図 1 に示されている 3 つの対応するマスター パターンから一致する方位を持つ各相からの実験的な EBSD パターン。実験パターンから生成した実験マスターパターンが最も実験パターンと似ていることが分かります。

 

図2は、各相から得られた単一の実験EBSDパターンと、図1に示した対応する3つのマスターパターンの対応する方位を比較したものです。実験マスターパターンが実験パターンに最も類似していることを示しています。試料の表面状態やEBSDパターンの取得条件によっては、実験パターンに微細構造がほとんど含まれない場合があります。

 

EBSD mapping results using both Hough indexing, and spherical indexing with the three different types of master patterns. IPF maps are shown in the top row and the EBSD quality maps are shown in the bottom row.

図 3. 3種類のマスターパターンを用いて、Houghによる指数付け法とSpherical indexing法の両方を用いたEBSDマッピング結果。上段はIPFマップ、下段はEBSDイメージクオリティーマップもしくはSCIマップを示しています

 

図3は、3種類のマスターパターンを用いて、Houghによる指数付け法とSpherical indexing法の両方を用いたEBSDマッピング結果を示しています。この図は、表面方向に対するIPF方位マップ(上)とEBSDイメージクオリティーマップもしくはSCIマップ(下)を示しています。Houghによる指数付け法の場合、品質の指標はイメージクオリティー(IQ)値であり、Spherical indexing法の結果の場合、品質の指標はSpherical indexing法の信頼度指標(SCI)です。3種類のSpherical indexing法の結果において、SCI値は同じグレースケール値の範囲を基準としてプロットされており、明るい色調ほど相関性が高いことを示しています。

 

IPF マップに着目すると、一部の領域はHoughによる指数付けでは指数付けが不十分であることがわかります。また、Spherical indexingでは解析不良点が大幅に改善されて運動学的マスターパターンや実験マスターパターンには存在しない、指数付けが誤っている領域のある粒子が 1 つあります。これは、この多相試料に対するバックグラウンド処理の不十分さに由来するものと考えられます。キネマティック マスターパターンと実験マスター パターンはどちらも、ほぼ 100% の指数付け成功率を示しています。さらに、実験マスター パターンは最も高いSCIを示しており、実際の実験パターンを使用してマスター パターンを作成すると、Spherical indexingのパフォーマンスが向上することが分かりました。図 4 に、参考までにこの領域の相マップを示します。

 

Phase map of the region of analysis.

図 4. 解析領域の相マップ

 

まとめ

Spherical indexing法を用いることで、地質学と材料科学の研究において、より迅速で信頼性の高い結果を得るという恩恵を受け、人工合金から古代の岩石まで、あらゆるEBSDパターンの指数付けを容易に行うことができます。この手法は急速に普及しつつあり、世界中の研究室における革新的な研究や日常的なEBSD分析を支えています。運動学的回折法と実験的EBSDパターンを用いて得られるマスターパターンは、これらの改善された結果をより迅速に得るための手段となり、さらにSpherical indexingが実用的に運用できるようになります。