カソードルミネッセンス

電子顕微鏡レベルで材料の化学特性および電気特性について独自の知見を得ることができる。

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概要: 

カソードルミネッセンスとは?

ルミネッセンスは光、電子、電界といったエネルギー源によって励起された際に固体から光子が放出される現象であり、カソードルミネッセンス(CL)は、特に高エネルギーの電子によって励起された際に光子が光として放出される現象を指します。

発光分光分析装置と電子顕微鏡の出会い

カソードルミネッセンス顕微鏡法では、電子顕微鏡の電子ビームによって励起された材料からの発光(放出された光または光子)を分析し、その発光範囲は紫外線から赤外線の波長範囲(200-2300nm、または6-0.5eV)です。電子顕微鏡の電子線を絞る能力はサブナノメートルレベルであり、光学顕微鏡の回折限界をはるかに上回るナノスケールでの材料の発光特性を調べることが出来ます。加えてカソードルミネッセンス法によって得られた信号は、他の測定手法によって得られた情報と直接関連付けることも可能です。 

アドバンテージ     動作モード     用途      セットアップ      ワークフロー

なぜカソードルミネッセンス顕微鏡法を使用するのか?

走査型電子顕微鏡、または走査透過型電子顕微鏡(SEM、またはSTEM)のカソードルミネッセンスは、材料の組成、光学特性、電気特性を明らかにし、形態、微細構造、組成、および化学特性にマイクロスケールとナノスケールで相関付ける独自のツールです。

発光分光分析装置や光や電界によるルミネッセンスを利用した他の手法でも光学特性のキャラクタリゼーションは可能ですが、電子顕微鏡のカソードルミネッセンスにはその高い空間分解能に明確なアドバンテージがあり、直接構造情報と相関付ける能力を有します。光学顕微鏡の空間分解能は基礎物理に基づいて200-300nm(光源波長のほぼ半分)に制限されます。 それに対して、電子顕微鏡では電子ビームを非常に微小なスポットに集束し照射することが可能であり、サブナノメートルレベルの光学情報が得られる可能性があります。加えて、試料から発生する信号を使用して、サイズや形状などの形態情報や、組成、化学特性、結晶構造、電気特性など様々な特徴を明らかにすることも出来ます。従って、試料から得られる膨大な情報と、その情報をルミネッセンス(分光法)からの情報を直接関連付ける能力を組み合わせることで、カソードルミネッセンスは非常に強力な特性評価法となります。

カソードルミネッセンスはどのように発生するか?

カソードルミネッセンスは、高エネルギーの電子ビームの衝突によって試料が励起された状態になるために生じ、試料が基底状態に戻るときに光子の放出を引き起こします。半導体では、この励起過程が電子の価電子帯から伝導帯への移動を引き起こし、その後に正孔が残ります。このため、電子と正孔が再結合すると半導体から光子が放出されます。光子のエネルギー(色)と光子(フォノンではない)が放出される可能性は、材料、その純度、含まれている欠陥に依存します。

バンド構造に関して言えば、従来の半導体、絶縁体、セラミクス、宝石用原石、鉱物、ガラス類は同様に扱うことが出来、ルミネッセンスはバンドギャップを隔てたエネルギーの遷移、または不純物準位間の遷移の結果です。 金属では、試料の励起は表面プラズモンの発生によって生じ、減衰するとカソードルミネッセンス光子が放出されます。

アドバンテージ

機能 アドバンテージ
回折限界を超える光学特性のキャラクタリゼーション 個々のナノ構造とその集合体の光学特性の研究
半導体材料のクオリティ評価 半導体の成長を確認(材料とデバイス); 組成、点欠陥と拡張欠陥の分布の定量化 
光学材料と光学デバイスのキャラクタリゼーション 光の回折限界を超えた高い空間分解能での光学特性の評価 
鉱物中のテクスチャの解明 微量元素分布を明らかにすることで地球化学的過程の再構築が可能
形態と組成の同時評価 試料の形状、サイズ、結晶度、組成を光学特性と直接関連付けて試料の詳細を全て明らかにする
デバイスの製造工程全体が評価に不要 デバイスの処理工程全体を行う必要がなく、材料特性を非破壊的な方法で評価することが出来る。

 

動作モード

カソードルミネッセンスの光の放出は、波長(エネルギー)、角度(運動量)、そして分極の分布によって定義することが出来、ある箇所(試料の点、または狭い領域)、または像やスペクトラムイメージ(測定を行いたい分布範囲に依存)を形成可能な配列した分析点から測定を行うことが可能です。カソードルミネッセンスの検出器は、これらのひとつ、あるいは複数の情報の分布の解析が可能であり、先端の分析手法では一つ以上の分析を同時に行うことができます。単一(または狭い範囲の)波長、角度、または分極分布を選択する分析モードは、”~フィルタ”と呼ばれるのに対し、分布全体を記録する分析モードは”~分解”と呼ばれます。例えば、分布は(ある光学手法によって)分散され全体の分布が平行して測定されます。

分析を行う分布 方法の選択 単一の点からの測定 配列した位置からの測定
全信号 無し アンフィルタCL信号 アンフィルタCLマップ
波長 フィルタ 波長フィルタCL信号 波長フィルタCLマップ
波長 分解 波長分解CLスペクトル 波長分解CLスペクトルイメージ (3D)
角度 フィルタ 角度フィルタCL信号 角度フィルタCLマップ
角度 分解 角度分解CLパターン 角度分解CLスペクトルイメージ (4D)
分極 フィルタ 分極フィルタCL信号 分極フィルタCLマップ
波長と角度 分解 波長-、角度分解CLパターン 波長-、角度分解CLスペクトルイメージ (5D)

 

それぞれの動作モードに依存して、えられる結果は強度(数値)、ラインプロット(スペクトル)、像またはマップ、スペクトルイメージ(3、4、5次元)となります。一般に使用される動作モードの詳細を以下に説明します:

アンフィルタ信号: 全ての波長を含む、例えば放出された光に対して全くフィルタリングや分散を行わない信号。信号強度は光電子増倍管(PMT)やソリッドステートダイオード(SSD)のような光を検出する検出器によって測定。

アンフィルタマップ: 電子ビームで試料面上を走査し、各分析点での放出光の強度を記録し(2D)マップとして表示。

パンクロマティック、ポリクロマティック、あるいは強度統合イメージングとも呼ばれる。

用途: 鉱物中のテクスチャを明らかにする、例えば、帯状構造、過成長、マイクロクラックなど。また半導体材料とデバイス中の拡張欠陥を明らかにする。 

波長フィルタ信号: 単一、または狭い範囲の波長のみが含まれる信号。波長の選択は、光を検出する検出器によって信号強度を測定する前に光学フィルタ、または波長分散分光器の出射面のスリットによって行う。

波長フィルタマップ: 電子ビームで試料面上を走査し、指定した波長の範囲内の放出光強度を各位置に対して記録しマップ(2D)として表示。

モノクロマティックイメージングとも呼ばれる。

用途: 組成、および結晶構造から材料を識別。半導体材料の完全さを確認したり、ナノフォトニクス材料の共鳴モードの決定が可能。 

波長分解CLスペクトル: 放出光を収集し分散することで波長に対する信号強度が決定可能なスペクトル分析。分散は通常回折格子を備えた分光計や分光器によって行われアレイ検出器(例えばCCDなど)によって検出が行われる。波長分解CLスペクトルは、分光器の波長選択スリットに対して分散光を走査することで信号強度を、例えばPMTなどによって記録することでも得られる。

波長分解CLスペクトルイメージ: 電子ビームで試料面上を走査し、全ての波長のスペクトルを各位置に対して記録しデータキューブ(3D)として表示。配列した検出器が完全な波長分解CLスペクトルをピクセル毎に取得するために用いられる。

ハイパースペクトラムCL解析、または波長イメージングと呼ばれる場合もある。

波長フィルタCLスペクトルイメージ:  電子ビームで試料面上を走査し、全ての波長のスペクトルを各位置に対して記録し(3D)のデータキューブとして表示。各電子ビームの走査毎に測定波長を変更し一連の波長フィルタCL像がPMT、またはSSDによって収集される。  

用途:  化合物(または相)の識別、電子構造の決定、組成分布、スペクトル構造の強調や重なりの解析 

角度分解(AR)CLパターン: 光子の放出方向の情報を有する2次元の像として放出光を取得。像中の各ピクセルには放出光の固有の放出方向に関する情報を保持。通常、取得された像は、検出光学系を考慮し放出光を仰角と方位角で極座標表示に変換される。

運動量分光と呼ばれる場合もある。

角度分解(AR)CLスペクトルイメージ: 2次元の放出光のパターンを各位置に対して取得し、4Dのデータセットを生成。

用途: 発光デバイスの放出光パターン、光の回折限界以下でどのように光と物質が相互作用しているかの理解

波長- 角度分解CL (WARCL): 角度分解放出光パターンを回折格子を用いた分光器で波長に応じて分散。通常、より高い空間分解能と波長分解能のために、各放出方向に対して完全な放出光スペクトルを収集しながらある角度範囲を逐次走査する。

エネルギー-運動量分光と呼ばれる場合もある。 

用途: 発光デバイスの波長分布(色)を観察方向に対して理解し、どのように光と物質が相互作用しているかの深い知見を得る

 

 

 用途

極小の長さのスケールで光学特性を評価することは、以下のような科学的な研究や技術の分野で不可欠です。

  • 発光ダイオード (LED) 
  • ナノ粒子
  • 石油と地質
  • 光電子材料と光起電材料
  • 蛍光物質
  • 2次元材料
  • 医薬品
  • ポリマー
  • 貴金属(プラズモニクス) 
  • 有機材料
  • 太陽電池

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エレクトロニクスとオプトエレクトロニクス – 半導体材料に対して、局所的な電子バンドギャップを測定したり、マイクロからナノスケールで欠陥の分布を明らかにすることが出来ます。GaAsやGaNのような強いカソードルミネッセンスを示す直接遷移半導体は簡単に、またSiのような間接遷移半導体の弱いカソードルミネッセンスの測定も可能です。特に転位を有するシリコンと完全結晶のシリコンの間の発光の違いを利用して 集積回路中の欠陥の分布のマッピングが可能です。 加えて、集束された電子ビームによってもたらされる高い空間分解能によって、量子井戸や量子ドットといった低次元半導体構造を調べるのに適しています。

地球科学 – 岩石や鉱物中の微量元素の化学的および地球化学的影響を観察することで、地質過程を再構築できます。カソードルミネッセンス検出器を備えたSEMやカソードルミネッセンス光学顕微鏡を使用することで、他の手法では観察が不可能な内部構造を明らかにし、鉱物の組成、成長、起源を決定することが出来ます。
材料科学 – 光と金属ナノ粒子の相互作用に基づく、新しいセンサーおよび通信技術が現在開発されています。これらの特性は、表面プラズモンおよび局所表面プラズモン共鳴モードによって決定可能です。最近の研究発表によると、研究者は電子顕微鏡のカソードルミネッセンスを使用して、回折限界を超える分解能で金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴を研究しています。
有機分子 – 多くのポリマーと医薬品の有効成分はカソードルミネッセンスを示します。ルミネッセンスの特性は試料の組成ではなく分子の化学的な構造によって決まります。このため、カソードルミネッセンスを使用して有機分子の分布を100nm以下の空間分解能で素早くマッピングすることが出来ます。 

 

電子顕微鏡のセットアップ

電子ビームが試料を励起すると、試料の表面近くの領域からルミネッセンスが生じます。上半球で生じたカソードルミネッセンスを集光するために、試料とポールピースの間にミラーが挿入されます。ミラーは電子顕微鏡の真空チャンバー内から分光器または光子検出器に光を伝送する特別な形状を有しています。電子が透過するTEM試料のような薄い試料の場合、試料の上部と下部にミラーを配置することで両方の半球で生じた光を集めます。

電子顕微鏡の集束したビームをX,Yパターンに走査し各点において放出された光を測定することで、試料の光学的な活性マップを得ることが出来ます。この電子顕微鏡を用いた手法の主なメリットは、構造を1nmのスケールで解像し、対象物の光学特性を同時測定、あるいは同一機器内で測定した構造的、組成的、化学的特性と関連付けることが出来ることです。

一般に試料から放射される光量は極めて少ないことから、出来るかぎりの多くの光子を集めて検出しなければなりません。光を効率よく放出するよう作製された試料であっても、光学的な損失を最小にして光子を収集し検出するために測定条件を最適化することが重要です。それによって最高の空間分解能を達成することが可能となります。 

ワークフロー

カソードルミネッセンスのワークフローをより良く理解するため、目的に応じた最適な電子顕微鏡を選択してください。

SEM          STEM

Research Spotlight

TEM team & collaborators from left to right: Dayne Swearer, Rowan Leary, Emilie Ringe, and Sadegh Yazdi.

The Ringe Group was established in 2014 in the department of Materials Science and NanoEngineering (MSNE) at Rice University, Houston...

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