低減によって得られるものとは ー 電子カウンティングEELSによる照射電子線量、ダメージ、そして取得時間の低減
信頼性の高い電子エネルギー損失分光法(EELS)のスペクトルを取得することは長年のテーマであり、広いエネルギー範囲 (keV) 、高いエネルギー分解能(サブeV)、そして同時に広いダイナミックレンジ(数桁)が必要となることが大きな課題です。従来では、EELSはひとつの並列記録が可能なセンサーを用いて検出されていました。しかしながら、この一般的な検出器のダイナミックレンジは限られており、高いエネルギー分解能を得るためにはそのエネルギー範囲も非常に狭いものでした。これらは二つのスペクトルを高速で切り替えながら連続的に取得することで状況が改善されますが、その代償として試料に対する余分な電子線照射(結果として取得時間)が発生します。この考えをさらに拡張し、複数のスペクトルを取得することは論理的には次の有効な手段として考えつきますが、これは電子線照射に耐える試料の分析に対して、取得時間が問題とならない場合においてのみ有効です。このアイデアを突き詰めると、シリアル検出のEELS分光器の時代に逆戻りすることになり、素晴らしいスペクトルが取得出来たとしても多くの人が利用したいと思うようなシステムではなくなってしまいます。
EELSにおける照射電子線量と取得時間に対する効率的なアプローチは、高いクオリティのひとつのスペクトルを取得することです。これは高精細、直接検出、電子カウンティング検出器であるK3® を使用することで実現されます。HDフォーマット時に5760のエネルギーチャンネルを有するK3は、1 eV以下のエネルギー分解能で3 keVのエネルギー範囲を、そしてコールド型FEGが達成可能なエネルギー分解能で2 keVのエネルギー範囲をひとつのスペクトルで得られます。完璧な検出器というものは存在しませんが、本ウェビナーでは、K3を搭載したContinuum®が如何にして完璧に近づきつつあるのか、そして試料への照射電子線量とダメージを抑え、電子顕微鏡の貴重な時間を活用するかご紹介します。