直接検出型カメラを使用した分割露光EELSスペクトルイメージング
マルチフレーム積算スペクトルイメージング(SI)法が提案され、STEMの像分解能とシグナルノイズ比(SNR)の双方を改善する手法として実証されました[1]。EELSによる測定において、シンチレータを備えたCMOSやCCD検出器は読み出しノイズの影響によって低電子線照射量、高速のマルチフレーム積算SI法には不向きです。一方、直接検出型の電子カウンティングカメラはほぼノイズの無い読み出しが可能であるため、低電子線照射条件下でのマルチフレーム積算EELS SIデータの取得に理想的です[2]。
本ウェビナーでは、最高9000ピクセル毎秒の速度でSIデータの取得を可能とするGatan社の電子カウンティングカメラとeaSI™ テクノロジーの機能についてご紹介します。これらのカメラによって実現されるほぼゼロの読み出しノイズによって、この超高速のスペクトル取得速度を最大限に活用することが出来ます。すなわち、マルチフレーム積算SI法によるアプローチはあらゆる測定において非常に有効な手法となります。広視野の単一のSIのパスが僅か数秒で取得可能であることから、低電子線照射量のデータ取得と高頻度のドリフト補正が実現されます。さらに不要なデータは測定後に削除可能であることから、総照射電子線量の調整をデータ取得後に行うことが出来ます。これは総照射電子線量に敏感な試料の、限界照射電子線量が事前に不明な場合に有効です。
凍結細胞切片の元素マッピング(STEMクライオEELS)、遷移金属Kエッジの電子エネルギー損失近傍構造(ELNES)マッピング(超高エネルギーロスEELS)、電子線照射に敏感な酸化物の低温での原子分解能EELSマッピング(HR-STEM、クライオEELS)など、この手法を使用したさまざまな応用例をご紹介します。
[1] Jones, L., et al., Microscopy 67. Suppl 1 (2018):i98-i113
[2] Goodge, B. H. et al., https://doi.org/10.48550/arXiv.2007.09747